ダウン症者が抱えやすい合併症や疾患 その2

合併症や疾患その2

ダウン症者が抱えやすい合併症や疾患 その1」の続きです。

 

皮膚疾患

ダウン症児の皮膚所見としては

  • 猿線(単一手掌屈曲線)…手相で言うところの頭脳線と感情線が一直線になっている状態
  • 皮膚大理石病…大理石のように網目状に皮膚が変化する疾患
  • 拇趾部弓状紋…足の親指の根元部分に弓状の線が入っています
  • 皮膚角化症…皮膚が硬くなってしまう症状
  • 皮膚乾燥症…皮膚が常に乾燥している状態が続く症状
  • 脂濡性湿疹…赤み、赤ら顔、ブツブツ、かゆみ、フケなどが出る症状
  • 皮膚角化亢進…角層の過剰形成や角層剥離の遅延が生じ角層が厚くなる症状
  • 深いしわ
  • たるんだ皮膚
  • しもやけ

などが挙げられます。

ダウン症児は全般的に乾燥傾向ですが、年長児の皮膚は特に乾燥傾向が強くなる時期といえます。
口唇は乾燥して縦に亀裂が入ることもあります。
筆者の娘優も唇の亀裂は冬場によく起こります。なので冬場は必ず保湿クリームを塗って寝ます。

また、ストレスに関係しているのか、円形脱毛症も一般よりも多いという報告があります。逆に気管支喘息は少ないとの報告もあります。この辺りは個人差によって違いが出てくるようです。
通常のケアで改善されない場合は、皮膚科医に相談することが重要です。

 

眼科疾患

ダウン症には高頻度に眼科的な異常を伴います。特に近視性乱視の合併が多いです。

目の発達の最も大事な時期である0~7歳頃の限られた時期に発見、対処が大事です。
そのため、生後6ヶ月までに先天性の器質的異常(先天性白内障など)の有無、1~2歳までに斜視の有無の確認が必要です。特に内斜視は早期発見が求められます。
また、遠視、近視、乱視などの早期発見も大事になります。これらはダウン症児の多くにみられます。

軽度の屈折異常は経過観察でもよいですが、中等度以上の強さがあれば眼鏡による早期の屈折強制が必要です。
視力検査ができなくても、調節麻痺薬点眼による精密検査で屈折異常の程度を調べ、それに合わせた眼鏡の度数が決定できます。
視力が発達する大事な時期に、視力の発達を促してあげることはとても重要なことです。

年齢が大きくなるにつれて、上下斜視による「眼性斜頸」がみられることがあります。定方向の両眼視でうまく焦点が合わないため、見えにくさを軽減しようと首や頭をいつも同じ方向にかしげるようになります。

ダウン症者には逆さまつげの人が多いので、目やに、目の充血を繰り返し起こすことがあります。

思春期以降には、円錐角膜、白内障といった眼疾患が出現することがあり、それらは進行性で、程度が強い場合には手術を行う必要があります。

 

耳鼻咽頭科疾患

ダウン症児(乳児~小学校低学年)では、難聴の報告が30~75%くらいにみられます。
その原因として、「滲出性中耳炎(しんしゅつせいちゅうじえん)」が考えられます。

滲出性中耳炎は、治りが遅く、重症化しやすいのが特徴です。
中耳腔に滲出液(血液成分が血管外に漏れ出てきたもの)が貯留している状態で、痛みも発熱もなく、大きな声には反応も示すため、親が気付かないこともあります。

呼びかけ反応が悪いのは発達遅延のせいにばかりせず、聴覚がきちんと機能しているかも疑ってみる必要があります。
軽い難聴でも長期間続くと言語発達にも影響が出ます。

滲出性中耳炎の治療は、

  • 鼻汁吸引
  • ネビュライザー等の鼻咽腔治療や通気
  • 抗生物質等の投与の保存的治療
  • 鼓膜切開・換気チューブ留置等の外科的治療

などがあります。

治療により聴力改善すると、表情が明るくなったり、発語が活発になったり、情緒面・言語面での変化が見られます。

ダウン症児は、外耳道が狭いため「耳垢栓塞(じこうせんそく)」になりやすく、家庭では耳掃除が難しいので、2,3ヶ月に1回程度は耳鼻科で耳垢掃除をしてもらいましょう。その時に滲出性中耳炎の有無も確認してもらいましょう。

肥満、筋緊張の弱さ、扁桃肥大、アデノイド増殖症等が原因で、睡眠時無呼吸症が起こることがあります。
扁桃肥大やアデノイドは手術切開が可能で、術後は熟睡、食べ物の飲み込みが容易に、体調回復などの例もあります。

耳鼻科検診は、1歳までに聴力検査含め1回、1~7歳では半年に1回、8歳以上では1年に1回は受けておくといいでしょう。

 

歯科疾患

ダウン症児は、乳歯の生え始めが遅かったり、永久歯への生え換わりが遅かったり、形がまばら、数が足りない、歯並びが不正、歯周病になりやすい、などが見受けられます。

むし歯の発症は健常者と大差ありません。

もともと歯の根が弱いこともあり、歯周病になり症状が進行すると早期に永久歯を失ってしまうことにもなりますので、定期的な健診が必要です。

先天性心疾患を合併している場合は、重度のう蝕や歯周病菌が感染源となって「心臓弁膜症」などを引き起こす可能性があるので注意が必要です。

筆者の娘優もそうでしたが、手指機能の発達の遅れから、食べ物を丸呑みすることも多いようです。
丸呑みする癖を身につけないように早期療育が必要ですし、また個人の機能にあった食形態の検討も必要かと思われます。

舌表面の溝や、歯周ポケットなどに食べかすが溜まりやすく、放っておくと口臭の原因になります。歯磨きは毎日念入りに行いましょう。

歯や口は、「呼吸をする」「食事をする」「会話をする」など、非常に大事な器官です。歯や口の健康が全身の健康にもつながります。
継続的に受診できる「かかりつけ歯科」があると安心です。

 

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