ダウン症者が抱えやすい合併症や疾患 その1

合併症や疾患その1

ダウン症者には、生まれつきでもっている合併症や疾患があります。

ここではダウン症候群の各合併症や疾患などを紹介していきます。

 

心臓疾患

ダウン症候群の40~50%に心奇形が認められています。

先天的心疾患には、顔色が悪くならない「非チアノーゼ性心疾患」と、唇や指先などの色が紫色に見える「チアノーゼ性心疾患」があります。

非チアノーゼ性心疾患では、房室中隔欠損症(心内膜床欠損症)、心室中隔欠損症が多く、その他では心房中隔二次孔欠損症、動脈管開存症などがみられます。
チアノーゼ性心疾患では、ファロー四徴症がそのほとんどを占めます。

国内の報告では心室中隔欠損症が多く、海外では房室中隔欠損症が多いといわれています。

心室中隔欠損症
※拡大表示できます。

一般の先天性心疾患の頻度と比較すると、ダウン症候群における房室中隔欠損症の頻度は非常に高く特徴的です。
手術が必要なことも少なくなく、小児心臓外科医などに診てもらう必要があります。

心臓疾患は心雑音がはっきりしないこともあり、先天性心疾患の有無を心エコー検査などで調べてもらう必要があります。
筆者の娘優の場合は、出生前に詳細な心エコー検査を行いました。

現在では心臓疾患が見つかったとしても、早期治療、改善、完治が可能になっています。

 

頸椎異常

頸椎(首の骨や神経)に異常が出やすいのもダウン症の特徴です。

中でも環軸椎不安定症(第一頸椎の「環椎」と第二頸椎の「軸椎」の環軸関節が不安定な状態)は、その頻度は10~20%といわれています。

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環軸椎不安定症になる原因としては、軸椎にある歯突起の形成不全や横靭帯(おうじんたい)が緩くなるためといわれています。

環軸椎不安定症の場合、頭部を含み環椎は軸椎に対して前方にずれることが多く、脊髄神経を圧迫して以下の症状をもちえます。(数字順に進行する可能性があります)

  1. 後頭部~後頸部の痛み
  2. 日常生活への違和感
  3. 両手のぎこちなさなどの症状
  4. 歩行困難などの症状

日常生活上、前転など頸を前に曲げて上から圧がかかるようなことがあると、急性脊髄麻痺を呈する可能性もありますので、遊びでも前転などは極力行わないほうが良いと考えられます。

2~3歳くらいに頭頚部側面で、前屈位、後屈位のレントゲンを撮り、環椎歯突起の間隔(ADI)を測定することが勧められています。

環椎歯突起

小児期ではADIの正常範囲を4mmとすることが一般的です。
少なくとも就学前には、「頸部の確認」と「運動制限の必要性の有無」を診断する必要があります。

また以下の場合が認められた場合は、何かしらの処置が必要になります。

  • ADIが5mm以上で臨床症状(後頭部の痛みなど)を有する場合
  • ADIが5mm以上で歯突起形成異常を合併している場合
  • ADIが7mm以上ある

 

消化器疾患

ダウン症児の消化器疾患合併は比較的多いといわれています。(約5%)

重症外科的疾患としては、十二指腸閉鎖、鎖肛(さこう)が多いようです。

十二指腸閉鎖は、新生児期に嘔吐を繰り返すことで見つかることもあります。

鎖肛は、肛門自体が無い、肛門が小さすぎるなど色々なタイプがありますが、低位型(直腸が肛門部の近くまできている)は肛門形成術で肛門を作ることができます。高位型、もしくは中間位型の場合は、新生児期に人工肛門を作り、幼児期または児童期になってから肛門を作る手術を受けることになります。

 

その他の消化器疾患としては以下の報告があります。

  • ヒルシュスプルング病…腸の動きをコントロールしている腸の神経節細胞がある程度の長さにわたってない先天的疾患
  • 食道気管瘻…食道と気管(または気管支)が、瘻管(ろうかん)という孔(あな)でつながる疾患で、食べ物が気管の方へ流れ込む可能性がある
  • 食道アカラシア…食べ物を飲み込む際、食道の蠕動運動(せんどううんどう)がみられず、食道と胃の境にある噴門部の開きが悪くなる疾患
  • 幽門狭窄…幽門(胃が十二指腸に接する部分)が狭まっていて、食べ物が胃から十二指腸へいきにくくなる疾患
  • 輪状膵…膵臓(すいぞう)が十二指腸を取り囲んでいる疾患
  • 胃潰瘍…粘膜や組織の一部がなくなり胃痛が起こる 悪化すると吐血や下血、腹膜炎などの症状が現れることもある
  • 十二指腸潰瘍…胃潰瘍と似ているが十二指腸潰瘍の場合、空腹時に胃痛が起こる 悪化すると狭窄や変形する恐れもあり

 

また、ダウン症者の多くに便秘が認められます。

便秘改善が難しいことも少なくないので、

  • 食物繊維の多い食材を摂る
  • 朝に冷たい水を飲んで腸を刺激する
  • 排便時間を決める
  • 軽い運動をする

など、生活習慣を変えるところから始めます。

浣腸を繰り返すと癖になって自分で排便できなくなるのではないか?と心配される方もいますが、楽に排便させることは排便の自立を図るのに必要です。

成人期では、便秘の他に、肝炎(B型肝炎が多い)が少なくないとの報告があります。

 

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